大腿骨骨頭軟骨下脆弱性骨折

(Subchondral insufficiency fracture of the femoral head)

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は、骨粗鬆症などの骨脆弱性を基盤とした、骨頭荷重部の病的骨折である。1996年Bangiliらによってはじめて報告された11)。この疾患の初期には、単純X線写真では明らかな異常は分からず、診断が遅れることが多い。

1.疫学

 骨粗鬆症患者(高齢/女性)に多く発生する傾向がある。腎移植後の発生や稀ではあるが若年者での発生も報告されている。急速破壊型股関節症の病因の一つとしても考えられている12)13)14)。

2.診断(表)

 骨粗鬆症を有する患者に、転倒しそうになった等のminor trauma、いつもよりたくさん歩いた等の過負荷を契機として発症することが多いが、全く誘因が無いこともある。しかし近年では、難治性のSIFFHに股関節鏡を用いて治療をする報告があり、股関節唇損傷と高頻度に合併していることが明らかにされている15)。故に、股関節唇損傷による微小な不安定性(microinstability) に基因して、次第に疲労骨折を起こしてくるため、中高年のスポーツ愛好家でも発症する。

  • 単純X線

 初期は異常所見に乏しい。圧潰が進行しなかった症例では、数カ月後に硬化像が認められる。圧潰進行の場合は、荷重部の不整像や、軟骨下骨折線が認められる。特発性大腿骨頭壊死症に特徴的な帯状硬化像は、あまり認められない 。

  • MRI検査

 本骨折は病的骨折であり、必須の検査である。特徴的な所見は、T1強調画像における大腿骨頭荷重部直下での強い低信号バンド像及び周囲の骨髄浮腫像 (Bone marrow edema pattern)である(図2)。このバンド像は不規則かつ蛇行、中枢側に凸であることが多く、大腿骨頭壊死症(遠位側に凸のバンド)との鑑別に重要である13)14)。ペースメーカー等でMRI検査ができない場合は、骨シンチグラフィー等を検討するべきである。

3)関節鏡分類

Uchidaらは、SIFFHの関節鏡所見を以下のように分類した。全症例股関節唇損傷を伴っていることから、microinstabilityが病態の原因として考えられる。

Grade 0: 正常

Grade I: 圧潰前

Grade IA: 軟骨が正常であり プロービングをしても安定している

Grade IB: 軟骨に亀裂があるもしくは 細線維化

Grade IC: 軟骨に部分的不連続性あり、プロービングをして不安定

Grade II:  軟骨下骨圧潰

Grade IIA: 関節症変化なし軟骨に部分的不連続性あり、プロービングをして不安定

Grade IIB: 中等度の関節症性変化あり 軟骨変性あり

Grade III: 軟骨は完全に圧潰 高度な関節症あり

3.治療

圧潰が進行していない症例では安静、免荷での保存療法を行う。保存療法で改善せず、圧潰前の状態であれば、関節鏡視下手術による治療が有効である。 Grade IからGrade IIAまでが鏡視下手術の適応である。関節唇を修復し、 FAIによるインピンジメントがあればFAIを矯正する。SIFFH病変部分は 鏡視下にハイドロキシアパタイトポリL乳酸ピンを用いて内固定を行い、最後に関節包を縫縮する(図3)。

骨粗鬆症の治療も同時に開始する。圧潰が進行した症例では、人工骨頭・人工股関節置換術が行われることが多い。若年発症に対して大腿骨頭回転骨切り術を施行した報告もある16)。

4.誤診しないためのポイント

SIFFHは特に既往が無くても、骨粗鬆症や関節唇損傷に合併して起こりうる。圧潰が生じる前にMRIでの確定診断をつけるべきである。MRI画像を読影する際、バンド像の向きや形状に注意を払う。

11)Bangil M, Soubrier M, Dubost JJ, et al. Subchondral insufficiency fracture of the femoral head. Rev Rhum Engl Ed. 1996;63(11):859–861.

12)Yamamoto T, Bullough PG. Subchondral insufficiency fracture of the femoral head: a differential diagnosis in acute onset of coxarthrosis in the elderly. Arthritis Rheum. 1999;42(12):2719–2723.

13)Yamamoto T, Schneider R, Bullough PG. Insufficiency subchondral fracture of the femoral head. Am J Surg Pathol. 2000;24(3):464–468.

14)Ikemura S, Yamamoto T, Motomura G, Nakashima Y, et al. MRI evaluation of collapsed femoral heads in patients 60 years old or older: Differentiation of subchondral insufficiency fracture from osteonecrosis of the femoral head. AJR Am J Roentgenol. 2010;195(1):W63–W68.

15)Uchida S, Noguchi M, Utsunomiya H, et al. Hip arthroscopy enables classification and treatment of precollapse subchondral insufficiency fracture of the femoral head associated intra-articular pathology. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2018;26(8):2527‐2535.

​これは若松病院から発表された新しい手術方法の文献です。

16)Sonoda K, Motomura G, Ikemura S, et al. Favorable Clinical and Radiographic Results of Transtrochanteric Anterior Rotational Osteotomy for Collapsed Subchondral Insufficiency Fracture of the Femoral Head in Young Adults. JB JS Open Access. 2017;2(1):e0013.